OBの名言 2 「この一本の為に」


「ああ、俺は、この一本の為に何十時間も練習したんだ。」

 

英語版漫画:

That was it. That one serve was the reason I’d worked myself to exhaustion for so many hours.

 

Crunchyroll字幕:

Man…How many hours did I practice for just this one shot?

 

いつも1年生ピンチサーバーの山口にジャンプフロートサーブ(通称ジャンフロ)を教えてくれている嶋田マート(肉屋さん)の嶋田さん。練習場所もお店の隣の駐車場です。漫画の上のコマにあるように、これは彼が初めての試合でサービスエースを決めた時につくづく思った心中の言葉です。私には分かります!スポーツって本当にその通りなのです。この言葉にも本当にブンブン頷いてしまいました。

 

ハイキュー‼ にはこのような人生の真実の言葉がギッチリ詰まっています。スポーツの試合はもちろんのこと、通訳の場面でもこう思うことがよくあります。例えば、お客様が大量の資料を送って下さって、ヒーヒー言いながら全部読み通した翌日、その資料のどこかに書いてあった初めて見る単語が実際に通訳中に出てきたときなどがそうです。大量の資料の中の一単語。実際に使われるかどうかわかりませんでしたが、でも「あ~、ちゃんと辞書を引いておいてよかった」と思う瞬間です。

 

まず先に字幕の方です。”Man” (良い意味の「こんちくちょう」と言う感じでしょうかで始まっている点と、短くまとまっている点が良いと思います。ただ、この訳文だと苦労したことに焦点が当てられてしまい、苦情を言っているように聞こえてしまう危険があるような気がします。もちろん視聴者は映像を見ながらこの字幕を読んでいるので、声優さんの声の演技がニュアンスなどは伝えてくれますし、次のコマのセリフもありますので、伝えたい意図はちゃんと伝わるとは思いますが、1文だけを切り取ってみると的確な訳とは言えないかもしれません。

 

ですので私としては、漫画で使われている、”XXX was the reason の方が原文の言わんとしている「ああ、これを味わうために俺は大変な練習をしてきたんだなあ」という気持ちにより近く寄り添っていると思います。ただし、”worked myself to exhaustion” はなんだか高校の和文英訳のような言い回しに聞こえますので、もうちょっと口語的な言い方、例えば、”worked myself to the bone” などを使ってもよかったのではないかと思いました(米語だと”worked my ass off”でしょうか?)。とはいえ、 単に原文通りに「何十時間も練習した」だけでなく、それに補足的にこの表現を付け加えて原文の意味を強調してくれたのですから文句は言えません。

 

 

漫画9巻 アニメ125