先日は数日間民事裁判の通訳を担当させて頂きました。法廷裁判の通訳には、裁判長や法廷弁護士がお互いに話すときの会話を聞き取る難しさがまずあります。法廷では通訳者は法廷弁護士の背後に着席しますので、まず物理的に弁護士の声が聞き取りにくいこと。裁判官や法廷弁護士の中にはとても声が小さい方も少なからずいらっしゃることも通訳者にとっての問題です。ですからそのような会話中のウィスパリング同時通訳は音量的にとても無理です。一度だけ家庭裁判所で審理中ずっとウィスパリング同時通訳をしたことがあります。これは裁判官の指示によりウィスパリングをすることになったため、各人が大きな声で話すように裁判官がとても気を使って下さったからこそ実現したことでした。
それから、法律の専門家同士がお互いに話すときの会話はまず言葉遣いからして普通の会話とは違いますので、やはりいくら法廷通訳としての資格は持っていても決して理解しやすい内容ではありません。また、このような会話中は逐次通訳を差しはさむ時間はありませんので、通訳者はひたすらメモを取って、休憩時間になったらクライアントに要点を告げることしかできません。
しかしイングランドの法廷で何といってもありがたいのは、堅苦しい雰囲気がそれほどないことです。一度だけ担当した刑事犯罪の場合はまた少し話が別でしたが、少なくとも民事裁判では、通訳者が聞き取れなかった部分は遠慮なく繰り返しをお願いできる雰囲気があります。日本もそうだといいのですが。通訳者が聞き返すのを恐れるあまり誤った訳出をしてしまっては誰のためにもなりませんね。
いつも言っていますが、通訳者だからといって聴力が人より優れているわけではありません。ですかあ「通訳者がしっかりと音声を聞き取れる環境を整える」という意識がもう少し法廷関係者に浸透してくれることを願っております。聞き取れなかった内容を通訳者が想像で補って誤った訳をしてしまうような状況は避けなければなりません。
I recently spent a few days in a high court interpreting. The biggest problem I always face in a court is the volume of people's voice. The judge or lawyers are sometimes soft spoken and interpreters always sit behind the lawyers. Remember, sounds don't travel well backwards and interpreters are pricking their ears trying to understand conversations dotted with court jargon.
Creating an environment where interpreters can hear everyone well is a big step towards ensuring accurate interpreting. Using microphones is a good way of achieving it, especially every court room seems to be equipped with them.