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通訳者は「黒子」の意味は?What does "interpreters should be like "kuroko" (黒子) mean?

この写真で女形俳優の後ろで何やらお世話をしている黒衣の人物が黒子です。歌舞伎の世界では黒衣の黒子や、裃に袴の「後見」さんがいろいろと演技中の役者さんのお手伝いをします。黒子も後見さんも観客の目からは見えないことになっている、という暗黙の了解があります。

 

「通訳者は黒子に徹するべき」という言い方がよくされます。これには二通り意味があるでしょう。一つは、上手い通訳者というのは、通訳者がまるでそこにいないように透明な存在になれるものだ、という意味と。それからもう一つは、通訳者はお客様の会議やプレゼンテーションが上手くいくように、言語面だけでなく、会議がスムーズに進むためにできるだけトータルなお世話ができた方がいい、という考え方です。

 

私は後者派です。お世話をしている最中に透明であるか、くっきりお客様の目に見えているかはポイントではないと考えています。通訳者の見え方はあくまでもお客様が主観的にどう感じるかです。それよりも大事なポイントは、どれだけお客様のサポートや(必要ならば)後押しができるか、ではないでしょうか?その結果としてお客様は通訳者がまるでそこにいないかのように感じるかもしれませんし、逆に頼りになる杖のように感じてくださるかもしれません。どちらでもよいのです。

 

いろいろな見どころを用意している歌舞伎の舞台では、衣装の引き抜き(上に来ている着物の糸を引き抜いて一瞬で脱がし、その下に来ている着物が瞬時に現れるようにすること)や小道具の手渡しなど、黒子がいなくては役者さんの演技は成り立ちません。本当に黒子が全く目に入らない観客もいるでしょうし、私のように黒子のテキパキとした動きまでお芝居の一部として楽しんでしまう観客もいます。要するに大事なのは、お芝居の段取りがテキパキと支障なく進むことです。そして、その演目をよくわかっている黒子にお世話をしてもらうと、役者さんもとてもやりやすいそうです。

 

「黒子に徹する」の意味は、お客様の眼からは黒子は絶対に見えてはならない、という意味だけで使われているのではないことをお分かりいただけましたでしょうか?

 Kuroko literary means "a person in black". According to Weblio (an online dictionary site),  the definition of kuroko is: "a stagehand dressed in black who assists the actors in various ways during the performance".

 

For me, this is exactly what a good interpreters should be capable of.  When people say that interpreters should be like kuroko, they often mean that best interpreters are the ones whose existence is not felt while interpreting. My view, however, is different. whether the existence of an interpreter is felt or not is beside the point. It depends on the client if he/she feels their interpreter's existence.  I believe the important thing is that the interpreter is doing a good job in assisting her client.